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スポーツドクターコラム

No.36「ランナー膝はランニングによる膝の酷使が原因」

2006/08/10

ランナー膝



ランニングで膝を酷使した場合に起こる障害を、総称して『ランナー膝』と言います。長距離走者に多くみられ、他種目でもシーズンオフ後や合宿での走り込み時に発生しやすくなります。

実際の診断名は、痛みを訴える箇所によって様々です。中でも代表的な症状の1つに、膝の外側に痛みを感じる『腸脛靱帯炎』が挙げられます。これは股関節と脛骨を結ぶ腸脛靱帯と、膝の外側に出っ張った骨が擦れて炎症を起こす障害です。原因は、走りすぎや膝が外向きに開いているO脚気味のアライメント(体のつくり)にもあると言われています。

膝のお皿の下端に感じる痛みは『膝蓋靱帯炎』が考えられます。膝蓋靱帯は大腿四頭筋、膝蓋骨と共に、膝が屈伸するときのストレスを吸収する役割を果たしています。そのため大腿四頭筋が疲労などで硬くなり、膝の負荷を吸収できなくなると、この筋肉と連動している膝蓋靱帯にも負担がかかり、炎症を起こしてしまうのです。

お皿の裏側の痛みは『膝蓋軟骨軟化症』が予想されます。走るときに膝を何度も屈曲するため、お皿の裏側にある軟骨と大腿骨が擦れ合い、関節面が傷ついて痛むのです。

お皿の内側の痛みは『タナ障害』の可能性があります。これはお皿の内側にある膜が繰り返し刺激を受けることにより、関節内に入り込んでしまう障害です。お皿と大腿骨の間に膜が入り込んで擦れるため、痛みが生じます。

膝の内側の痛みは『鵞足炎』が疑われます。鵞足とは、脛骨内側についている4つの腱の付着部のことを言います。これらの筋が、走る動作の中で過度な膝の回内によって引っ張られて、炎症を起こすのです。

いずれの障害も、ほとんどのケースでは、保存的治療により良好な経過を得ることができます。 
まず治療の基本として、練習後のアイシングと練習前後のストレッチは欠かせません。練習中はキネシオテープやサポーターで膝をある程度固定し、負荷を軽減させましょう。陸上のトラックを走るときは、折り返して反対方向に走ることも大切です。水はけをよくするためなどの理由で、トラックが平らでないこともしばしばあります。同じ方向で走り続けると、片方にだけ負荷がかかってしまうのを防ぐことも必要です。

長期的な予防も含めて考えた場合は、機能的足底板(インソール)を作ることも有効になります。選手個々の足の形を見てインソールを調整しますが、静止状態だけでなく、実際にランニング動作をする中で下肢に負担がかからないものを作成しましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。



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