トップページ > スポーツドクターコラム
スポーツドクターコラム
No.29「骨粗鬆症は高齢者だけの障害ではない」
2006/03/10
骨粗鬆症
骨は、皮膚と同じように毎日新陳代謝を繰り返しています。しかし、加齢や閉経などによって骨を生成する働きが弱まることがあります。骨量が減少してもろくなり、骨折しやすくなるのです。この状態を骨粗鬆症と言います。
高齢者の障害と思われていた骨粗鬆症ですが、最近では若い世代にも増えてきました。朝食を抜くなど、食生活の乱れた子供たちの骨密度は、昔に比べ圧倒的に低下しています。骨の生成に必要なカルシウム、タンパク質、ビタミンDを多く摂取できる日本食から、炭水化物や脂肪の多い欧米食に移行したことも、原因と言えるでしょう。
タンパク質は肉・大豆製品、ビタミンDはキノコ類、カルシウムは乳製品などから主に摂取できます。1日のカルシウム摂取量の目安は成人男女で600mgと言われており、消費の激しい運動選手はその約2倍が理想です。食事で摂取しきれない場合は、サプリメントを利用することも一つの方法でしょう。ただし成分や品質には十分注意して選ぶ必要があります。
骨量は骨格の成長とともに20歳頃まで増加し、成人期にピークを迎えます。このときの最大骨量を増やすことができれば、加齢とともに骨量が減少しても病的な値にまではなりにくいと言われています。最近の研究では、最大骨量のピークを過ぎた後も、運動をすることによって骨量が増加したり、減少のスピードを緩められることが分かってきました。
骨粗鬆症を予防するためには、筋肉の量が骨量に関係しているとの報告もあり、筋肉を動かす適度なレジスタンス運動が有効です。筋肉が動くことによって骨に刺激が与えられ、骨の新陳代謝が活発になり、カルシウムが定着する働きを助けることができるのです。膝への負担が少ない運動としては、水中ウォーキングやダンベル体操をお勧めします。ただ、カルシウムの消費が摂取量に追いつかなくなるなど、過度な運動が原因となって骨密度が低下することもあります。長距離ランナーなどでこの傾向がみられることも最近では問題になっています。運動はあくまで『適度』が大切なのです。
日光浴も、骨粗鬆症の予防には欠かせません。紫外線を浴びることによって、体内のビタミンDは活性型に変化します。この活性型ビタミンDが、腸からのカルシウムの吸収を高め、骨に蓄える役目を果たすのです。もちろん、日焼けするほど日光浴をする必要はありません。木漏れ日程度の日差しで十分効果は得られますから、家にこもらず、外出することを心掛けましょう。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。