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スポーツドクターコラム
No.45「セーバー病は成長期に起こる踵の障害」
2007/05/10
セーバー病
セーバー病は、成長期の子供に発生する踵の障害です。成長期の骨は大人の骨と違い、まだ完全に骨化していません。そのため踵の成長軟骨に繰り返して負荷がかかると、骨軟骨炎などの症状を引き起こしてしまうのです。骨の中を通る血管が切れて血流が一時的に悪化した場合、踵骨骨端核が壊死することもあります。
この障害の好発年齢は、骨端線閉鎖以前の8歳~12歳です。加療の有無に関わらず成長期を過ぎればほぼ完治するため、予後良好の病気と言えるでしょう。
症状としては、運動後に踵骨部痛を訴えることが多いようです。疼痛が強い場合は、痛みを避けるためにつま先立ち歩きをする人もいます。アキレス腱を伸張すると踵骨が引っ張られて疼痛が誘発されるため、これが1つの診断基準になるでしょう。またアキレス腱が踵骨に付着するあたりには、腫脹も見られます。患部がかなり熱を持っている場合は、血液中にバイ菌が入っている可能性もあるため、早めに診察を受けましょう。
診断の際には、アキレス腱炎との鑑別に注意が必要です。痛みを感じる部分が近いのですが、混同してはいけません。レントゲンで検査し、踵骨骨端核が骨硬化によって白っぽく見えれば、セーバー病と診断できます。ただ、軟骨が炎症を起こしている場合はレントゲンに写りません。疼痛の原因が分からない場合は過激な運動を中止し、松葉杖を使うなどして負荷を避けましょう。
治療は、加重時に踵骨骨端核にかかる負荷を軽減させることが目的になります。前足に重みがかかるように踵を高くするなど、工夫した靴敷きが有効です。 またシューズの選択も大切になってきます。芝生でのプレーを想定したスタッド付きのスパイクを土の上で使用すれば、必然的に負荷が増してしまいます。野球やサッカーなどの選手でも、アップでは別のシューズを用いる方が望ましいでしょう。最適なのは踵のクッションが優れ、土踏まずのアーチを保持したまま走ることを想定したシューズです。
さらに走るときも、できるだけ地面の柔らかいところを選ぶことで負荷を避けることができます。予防の観点から見ても、アスファルトの上などで走ることは好ましくありません。
疼痛に対しては、痛み止めの服薬やアイシングなどで対処します。痛みが軽減したあとは、アキレス腱の伸張訓練を行うようにしましょう。上から引っ張られる負荷に関しては、筋肉に柔軟性を持たせることである程度吸収できます。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。