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スポーツドクターコラム
No.51「サッカーやバスケに多い有痛性外脛骨」
2007/11/10
有痛性外脛骨
外脛骨は、足の親指と人差し指の根元に位置する舟状骨の内側に発生した種子骨(先天的に発生した小骨片)の一種です。ただ誰もが持っているわけではなく、約15%の人に存在すると言われています。
形状としては、
(1)外脛骨が舟状骨と離れているもの
(2)外脛骨が軟骨板で舟状骨と結合しているもの
(3)外脛骨と舟状骨が完全に癒合しているもの
という3つに分類でき、レントゲンでそのタイプを確認することが可能です。その中で最も多いのは、(2)のタイプになります。
有痛性外脛骨は、この舟状骨周辺に炎症などを引き起こす障害です。打撲や捻挫、繰り返しかかる内足部への負荷などが原因となって、痛みや腫れを生じます。中でも外脛骨が(2)のタイプの場合は、足を内反させる後脛骨筋が運動によって舟状骨を強く引っ張るために、軟骨板に亀裂が入って痛みを伴うことが多いようです。
競技別では、サッカーやバスケットボールなど、足を内反させる動きの多いスポーツでこの障害がしばしばみられます。また静止した状態での足のアーチ(土踏まず)が低い扁平足の選手や、運動時に膝が内に入りつま先が外に向くニーイン&トーアウトの選手は、この障害になりやすいと言えるでしょう。アーチが潰れると、それだけ後脛骨筋の引っ張りが強くなり、痛みが増してしまうのです。
治療は、外用剤や短期間の非ステロイド系抗炎症剤の投与などの保存療法が主になります。痛みの原因となるスポーツ活動を中止して安静にし、痛みを取り除くような温熱療法や足部のストレッチ、筋力強化を行いましょう。
足の筋肉は、裸足で生活したり、つま先立ちで歩いたり、足の指でタオルをつかむことによって鍛えることができます。症状が慢性化している場合は、足底板(インソール)の着用も効果的です。静止したときと運動時の足の形や骨の並び方を把握し、しっかりとアーチを支えるような足底板を作りましょう。アーチの落ち込みを防いで舟状骨にかかる負担を軽減させることによって、障害の発生を防ぐことができます。また後脛骨筋の引っ張りを緩和するために、キネシオテープを巻くことも有効です。
この他にも、外脛骨が(2)のタイプの場合は、超音波治療器を用いて障害の原因となっている軟骨板の骨癒合を早期に促す方法もあります。さらに最近では、腎臓結石の治療で骨を砕くために使われる衝撃波の周波を変えて、骨折の回復を早めることもできるようになってきました。
手術で外脛骨を除去する方法もありますが、前述の治療法でも十分症状を改善できます。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。