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スポーツドクターコラム
No.53「眼窩底骨折は目に外力を受けたときに生じる」
2008/01/10
眼窩底骨折
眼窩底とは、眼球が収まっている頭蓋骨の丸い窪みの底にあたる部分のことを言います。野球やテニスなどの球技でこの部位を骨折するケースがしばしばみられ、ケンカや転倒、交通事故でも負傷することが多いようです。
骨折の原因は、ボールが直接目に当たるなど、前方から受ける鈍的外傷になります。槍のようなもので突かれたときには、眼窩底骨折は起きません。野球の守備時にイレギュラーバウンドしたボールが目に当たったり、けんかで前から殴られたりと、固い物で眼球が押されることによって、眼窩の中で眼球や周辺の組織が居場所を失うため、一番骨が弱い底の部分が落ち込んでしまうのです。
症状としては、目が奥に引っ込んでいるように見える眼球陥没があります。また目を囲んでいる眼輪筋が骨折した箇所にひっかかっているときは、眼球運動に障害をきたすこともあるでしょう。目をうまく動かせなくなると複視(物が二重に見えること)を生じるため、重度の場合は日常生活で不自由に感じる可能性もあります。さらに眼窩底が鼻に近いこともあって、鼻血が出たり、腫れることも症状の1つとして挙げられます。
ただ、視力に関しては眼窩底を骨折したからといって低下するわけではありません。衝撃を受けたときに視神経を痛めたり、眼球自体を損傷してしまうことも考えられますが、比較的その傾向は少ないとされています。むしろ眼窩底の骨折により眼球が下に落ちることによって、障害が起きにくい状態にあると言えるでしょう。眼球運動の制限により視野が狭くなったり、複視になることがあっても、骨折が回復すればそれらの症状は改善するはずです。
車で例えれば、メーカーによっては前方から衝突したとき、エンジンが車内に押し込まれないように下へ落ちる仕組みになっているものもあり、それと似た原理です。
診断は、レントゲン、CT、MRIを用いて行います。中でも骨折を見極めるには、CTが有効です。さらに骨折に伴う眼窩脂肪や、目の外側にある外眼筋の嵌頓の有無を検査する場合は、MRIが最適でしょう。
また骨折整復術後の眼球運動障害が問題になったときに、その原因を究明するなど術後の観察としてもMRIは重要です。
複視や眼球陥没の症状がみられ、骨折が明らかになった人は、手術が必要になります。手術の方法には様々なものがありますが、一般的には骨片の整復術を用いることが多いでしょう。それだけで眼球の安定感が得られなければ、人工骨を使うなどして骨移植を行うことも考えられます。ただ骨折の程度が微少であれば、手術を行わずに経過を観察することもあります。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。