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スポーツドクターコラム
No.63「固定方法が重要な中手骨骨折」
2008/11/10
中手骨骨折
中手骨とは、手のひらと甲の間にある骨のことを言います。両手に5本ずつあり、各指の骨と手首の骨を繋ぐ役割があります。中手骨骨折は頚部骨折、基部骨折、骨幹部骨折、骨端線離開に分かれ、今回は中でも頻度の高い「中手骨頚部骨折」について紹介します。
頚部骨折は別名『ボクサー骨折』とも呼ばれ、ボクシングや空手など、拳を握った状態で相手や物などを殴った際の衝撃で負傷することがあります。ハードパンチャーのパンチが真っ直ぐきれいに入ったときは、第2、第3中手骨を骨折することがあります。また、一般の方が殴打した際は第4、第5中手骨を骨折する方が多く見られます。
症状としては、衝撃後に手部の激痛、腫脹、変形、運動障害などが見られます。他のスポーツでも例えば野球の場合では、スライディングや捕球動作時の手の着き方によって発生することもあります。ちなみに、デッドボール時に骨折することもありますが、直接外力のため骨がひどく転位することはないでしょう。他にはスキーをしていてストックを離さず転倒し、手を強打した場合等に見られ、スピードを競う大回転の競技者は特に注意が必要です。
治療方法は、骨に転位が見られる場合は麻酔をかけて徒手整復術を行いますが、一般的にはアルミニウム副子固定かギプス固定を行います。固定する際の注意点は、指を立てた状態ではなく、指の関節をすべて90度に曲げて整復固定をすることです。母指を除いた4本の指の腱は共同腱といい、4本の筋肉がまとまって1本の腱となり手首に繋がっているので、立てた状態で固定をすると、他の指を動かすことによって固定した指も一緒に動いてしまうため変形する場合があるからです。また、人間は曲げる筋肉の方が伸ばす筋肉より強くできています。90度に指の関節を固定しても他の指は自由に動かすことができ、なおかつ骨折した骨は転位することなく、しっかりと保存療法を行うことができます。
また、ピンやプレートを使い骨折部を繋ぎ合わせる内固定術を行うこともあります。ただ、先述した「90度の法則」によりしっかりとした固定ができるので、転位がひどくない場合は手術を回避することが望ましいでしょう。
骨端線が残っている若年層は、2週間程度でほとんどの骨がくっつくでしょう。また、しっかりとした固定を行えば4~6週間で骨は元に戻ります。安静にすれば早期復帰も可能なため、焦らず保存療法に継続して取り組むことが重要です。
治療が遅れると指の力が弱くなったり、思うように指を動かせなくなるなどの後遺症が残る場合もあります。負傷後に痛みが継続して起こる際は早めに受診しましょう。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。