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スポーツドクターコラム
第二期 Vol.23 「捻挫と混同しがちなリスフラン関節靭帯損傷」
2013/10/22
リスフラン関節靭帯損傷
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今回は、足の甲にある関節に起こる疾患『リスフラン関節靭帯損傷』について紹介します。
リスフラン関節は甲の中心部にあって中足骨(指の骨)と立方骨、楔状骨(甲の骨)を繋ぐアーチ状の構造をした関節です。聞き慣れない名前ですが、着地時など足に体重がかかったときに衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。関節自体が動くことはほとんどありませんが、足を動かす上で非常に重要な関節であり、障害を負うと構造に異変が生じて衝撃を吸収できなくなります。中でも、関節に過度の負荷がかかってしまうことによって起こるのが『リスフラン関節靭帯損傷』です。
障害の主な原因となるのは、つま先立ちになって踏ん張ったときなど上から体重がかかるケースです。ランニングはその代表的なものと言えるでしょう。その他、剣道やサッカーなど多くのアスリートに見られるのが『リスフラン関節靭帯損傷』の特徴です。一般の方でも重いものを持って移動する方やハイヒールを履く女性に見られることがあります。
症状としては、体重をかけた際に足の甲に痛みを感じる他、腫れや圧痛が見られます。損傷の程度によっては、痛みから通常歩行ができず、踵歩行になってしまうこともあります。体重をかけると痛みが増強するためどこが痛むのか正確に判断することは難しいのですが、『リスフラン関節靭帯』は第1楔状骨と第2中足骨を斜めに繋ぐ靭帯です。この部分に圧痛が見られるときは『リスフラン関節靭帯損傷』の可能性が高いと言えるでしょう。靭帯が損傷・断裂してしまうと、第1・2中足骨の連結がなくなり骨と骨の隙間が開く「中足骨-楔状骨間離開」を起こします。これによってアーチ状の構造が崩れてしまうのです。
靭帯損傷の有無はレントゲンによって診断することができます。しかし、甲を真上から撮影しただけでは骨が重なり合っているためにリスフラン関節靭帯が見えず、損傷の確認ができません。そのため撮影をするときは角度を変えるなど、2方向から撮影して診断します。レントゲンによってほとんどのケースで診断することが可能ですが、現在では3D-CTという3次元画像診断によって、より正確に診断することができるようになりました。
治療は保存治療が基本となります。まず、離れてしまった第1・2中足骨を寄せた状態にしてギプスで固定し、損傷した靭帯の修復を行います。症状の程度にもよりますが、患部に体重がかからないように1ヵ月ほど固定しながらリハビリを行います。ギプス固定が解除された後は足への負担を軽減するための足底板(中敷)を使いながら歩行練習を行って、徐々に体重をかけるようにしながら筋力や柔軟性を回復させます。一般的に競技へ復帰するには受傷後、約2、3ヵ月が必要になります。ただし『リスフラン関節靭帯損傷』は中足骨・楔状骨骨折を併発することがあります。この場合はさらに治療日数がかかることがあります。
この疾患は早期に診断・治療を行うことができれば経過の良いものですが、明確な受傷機転がないことから治療が遅れてしまうことがあります。また、症状が似ているために足首の捻挫と混同されることが多く、軽視されがちなことも注意すべき点です。長期間放置してしまった場合、靭帯の修復がままならず手術が必要になってしまうことがあります。力を加えた際など、足の甲付近に痛みを感じるようなことがあれば『リスフラン関節靭帯損傷』を疑い、早期に専門医の診察を受けるようにしてください。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。