スポーツドクターコラム
No.22「精神論だけでは熱中症は治まらない」
2005/07/10
熱中症
熱中症は、高気温、高湿度の環境によって体温調節がうまく働かなくなるために生じる様々な障害のことを言います。 一般的には夏の暑い時期になりやすいと思われていますが、湿度が高い場合には気温が25~26℃でも熱中症になってしまうため注意が必要です。
熱中症の症状は熱疲労、熱痙攣、熱射病の3型に分けられます。
まず比較的軽度の段階と言われる熱疲労では、全身脱力感や、口渇感、めまいなどを訴え、皮膚はじっとりとして冷たく、色も蒼白くなる症状が見られます。いわゆる『夏バテ』も熱疲労の一種といえるでしょう。これは多量の発汗により体内の水分が枯渇し、脱水に陥ってしまったために起こるのです。
症状の進んだ熱痙攣では、疼痛を伴う筋攣縮(スパズム)が見られます。これは脱水状態に加え、筋肉を動かすために必要な電解質(ナトリウム)が体内に不足しているためです。夏に足などを攣る選手が多くみられるのは、ほとんどの場合はこの電解質不足が原因と言えるでしょう。
さらに症状の重い熱射病は、顕著な脱水症状と40℃を超えるような高体温のために、意識障害が起こっている状態のことを言います。この段階までくると全身の調節機能が破壊されることもあり、かなり危険です。重度の場合には血管の中の細胞が壊れて血管が詰まり、あちこちから出血して止まらなくなってしまうDIC(全身性血管内凝固症候群)を起こし、死に至る場合もあります。
熱疲労の症状が見られた場合はまず涼しい場所で安静にすることが必要です。意識がある時はまず冷水を飲ませます。そして動脈が皮膚の表面を通っている首や脇の下、手首などを部分的にアイシングしましょう。霧吹きで皮膚に水分を噴射し、うちわなどで扇ぎ気化熱を利用することも効果的です。
熱痙攣の場合は、安静にすると同時に、スポーツドリンクなどの電解質を含む水を飲ませるようにしましょう。Jリーグでは、グラウンドの周りに水と電解質を含んだ飲み物を置くことが義務づけられ、チームに関係なくどの選手も飲むことができるようになっています。水分が欲しいと感じたときは、我慢せずに飲むことが大切なのです。ただし、一気に水分補給するのではなく、こまめに飲むことを心掛けましょう。
熱射病の場合は初期治療を迅速に行い、直ちに救急医療の整った病院に搬送しましょう。
熱中症では毎年死者も出ています。根性で治るものではありませんから、とにかく早急な対処が必要なのです。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。