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スポーツドクターコラム
No.41「長距離ランナーに多いコンパートメント症候群」
2007/01/10
コンパートメント症候群
下腿の筋群は、膜状の壁によって4つの区画(コンパートメント)に分けられます。これらの区画よりも筋肉が膨張してしまうのが、コンパートメント症候群です。
この障害は、下腿の4つのコンパートメント全てに生じる可能性があります。中でも前面に生じることが多く、競技別では長距離ランナーがなりやすいようです。
主な原因は、脛骨の骨折、打撲、筋断裂などによる外傷や、オーバーユースによる炎症などが考えられます。筋肉を包んでいる膜は一定以上広がりませんが、中にある筋肉が腫れることにより、神経や血管が圧迫されて様々な症状を引き起こすのです。骨でなく筋そのものを押すと痛みを生じるのが特徴で、下腿にしびれを感じたり、脈が振れなくなるなどの症状がみられます。重症の場合は、根本の神経が圧迫されて運動麻痺を起こし、足が上がらなくなることもあるため注意が必要です。
診断は、実際に走らせたり、仰向けに寝た状態で足首の屈曲と伸展を繰り返したときに症状が表れるかで判断できます。また、患部に注射器を射して、その先に血圧計をつけて診察する方法もあります。通常ならば何も起こりませんが、コンパートメント症候群の場合は筋肉が膨張しているため、血圧計が上昇するはずです。
治療は、まず氷などで冷やして包帯で圧迫し、心臓よりも少し高く下肢を上げるRICE処置を施しましょう。症状が慢性化している場合は、筋肉の緊張を除く針治療も有効です。
最新の治療法としては、高圧酸素療法を用いることも非常に効果的だと言われています。患部が腫れている場合、コンパートメントの中にある毛細血管が詰まっていることが考えられますが、溶解型酸素を血管の末梢まで送り込むことによって、炎症を早期に抑えられるのです。
障害の原因が、走るフォームや足に合わないシューズの使用など、ストレスのかかる走り方にあるときは、別の対処も必要になります。インソールを製作したり、キネシオテープを使用するなどして、筋肉の負担を軽減させるようにしましょう。
ただ重症で痛みが強く、血液の流れが感じられない場合などは、筋膜の切開を必要とすることもあります。
予防には、練習前後の患部のストレッチが大切です。さらに、練習後は炎症を抑えるためにアイシングを欠かさず行うようにしましょう。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。