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スポーツドクターコラム
No.67「長距離ランナーは足底筋膜炎に注意」
2009/04/10
足底筋膜炎
足底筋膜とは足の踵部分にある骨隆起の内側と、足趾の付け根にある基節骨底面を繋ぐ筋膜のことを言います。今回はその筋膜が炎症を起こす「足底筋膜炎」について紹介します。
土踏まずのアーチを保持しており、歩行時や走行時にバネの役割を果たしている足底筋膜には、踵部接地の際に衝撃を吸収するクッションの働きがあります。ランニングやジャンプなどの動作を繰り返すことにより足底筋膜に過度のストレスが加わると、付着部に近い踵部分が炎症を起こす場合があります。硬い路面やシューズの変更もその原因の一つとして挙げられます。
スポーツでは陸上の長距離ランナーや高飛びの選手によく見られ、土踏まずのアーチが高い人ほど踵部接地の際に筋膜が引っ張られ負担がかかるため、足底筋膜炎になりやすいという特徴があります。
症状としては、運動中に踵部の内側に疼痛が起こります。踵骨を手で押さえて痛みがある際は、まず足底筋膜炎を疑うことが大切です。痛みがそれほどない場合でも、足の指を反らすことで痛みが増強します。炎症を起こすことにより凹足(おうそく)、回内足、扁平足などの形態異常を引き起こす場合もあるので、実際に痛みを確認することは非常に重要です。
また、足底筋膜炎は運動を続けると徐々に痛みが楽になる傾向があります。ただ、運動量の増加やトレーニング内容を強度なものに変更すると、状態はさらに悪化し踵を着くことさえ困難になる場合もあるので注意が必要です。
圧痛を感じる際はランニングやジャンプ動作を制限、禁止しましょう。保存療法で十分回復するので、安静を心がけることが最も大切です。特に痛みが強い場合は、足に体重を掛けないよう松葉杖を使用し、消炎鎮痛剤の投与やアイシングを行いましょう。
また、足の裏の形やアーチの高さに合わせた足底板を作成することをお勧めします。シューズが足の形に適していない人は炎症が起こる可能性が高いため、アーチを支える足底板は効果的です。足を測定する際には静的状態だけでなく、足を動かしたときの動的状態でも必ず調べなければなりません。クッションの働きをさせるために、足の形より少し高めのアーチをつけるのがよいでしょう。それでも踵骨周辺に痛みを感じる際には、専門医を早めに受診して炎症の悪化を防ぐことが大切です。
足底筋膜炎を予防するためには、運動する前後にストレッチやアイシングを行うことはもちろん、筋力を鍛えることも重要です。立脚した状態で繰り返し踵を上げる運動や、足の指を閉じたり開いたり捻りを加えたりするトレーニングを行いましょう。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。