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胸郭の可動性が肩関節可動域に与える影響

 学会・講演会のご報告

2006/12/02

演者/津野泰介、中村雄一、今田岳男、寛田司
会期/平成18年12月2日(土)、3日(日)
会場/福山市医師会館

[目的]肩関節は複合体であり、その複合体の障害は直接的に関節の機能障害に反映される。肩関節複合体の構成要素の一つである胸郭に可動制限が生じることで複合体としての機能に影響を与えるといわれている。今回我々は、胸郭の可動性に着目し、肩関節可動域との関係を調査したので報告する。

【対象と方法】対象は、脊柱に著明な変形を有さず、肩関節周囲炎と診断された成人19名(男性5名・女性14名:平均年齢66.1歳)とした。尚、被験者には本研究の目的や方法などを説明し、研究参加の同意を得た。肩関節可動域の評価は、肩関節屈曲、外転、伸展の3方向を測定した。胸郭の形態は、胸郭拡張差を測定し評価した。胸郭拡張差は、腋窩、剣状突起、第10肋骨高位の3点で測定し、その最大呼気時と最大吸気時の差をテープメジャーにて測定した。また、拡張内容を把握するため、前額面上の正中線と、矢上面上の正中線が交わる4点を腋窩、剣状突起、第10肋骨周径上に印し、計12点を基準点として、最大呼気時と最大吸気時の胸郭の前後径差と横径差を外パスにて測定した。測定した値から前後径/横径の比率を算出し、その平均値を境に前後径の大きい群(以下前後径群)と横径の大きい群(以下横径群)の2群に分類した。これを基に、胸郭拡張差と肩関節屈曲、外転、伸展との関係を相関係数の検定を用いて分析し、さらに、2群間の肩関節可動域の比較はt検定を用いて分析し、危険率5%未満を有意差ありとした。

【結果】肩関節屈曲・外転・伸展可動域と第10肋骨高位の胸郭拡張差に相関関係を認め、肩関節屈曲・外転・伸展可動域は第10肋骨高位において前後径群より横径群が全てにおいて有意(p<0.05)に大きかった。

【考察】今回の結果より、胸郭拡張差低下が肩関節運動を制限させる一つの要因であることが考えられ、特に下部胸郭の可動性は肩関節屈曲、外転、伸展可動域に影響を与えていた。胸郭の可動性は脊柱の可動性を高め、姿勢制御にも寄与することが考えられる。福井は上半身重心は下部胸椎(Th7~9レベル)にあると報告しており、下部胸郭可動性が低下することにより姿勢制御機能の破綻を招き、さらに胸郭の可動性を低下させる悪循環を繰り返すものと考えられた。肩関節周囲炎の原因は多種多様であるが、身体機能の低下が原因となっている場合、胸郭の動きを考慮する必要性があることが示唆された。しかし、今回の結果からは、肩関節可動域制限と胸郭拡張差の因果関係については検討できなかったので、引き続き今後の研究課題としたい。

飛翔会の整形外科クリニック


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