スポーツドクターコラム《スポーツドクターコラム》
ひろスポ版【第6回】~仕事やスポーツなどによるアキレス腱の”使い過ぎ”に注意!かかとに腫れ、痛みが出るアキレス腱付着部症の予防と治療~
2015/01/07
アキレス腱付着部症
新しい年がスタートしました。一念発起!今年からスポーツを始めようと考えている方も多いことでしょう。スポーツ障害に対する知識を深めて、ぜひ有意義なスポーツ&余暇活動を楽しんでいただきたいと思います。
そこで、今回は「かかとの腫れや痛み」についてお話します。昨秋、このコーナーで「アキレス腱断裂」についてお話しましたが、今回もアキレス腱に関するスポーツ障害です。これまでと同様、カギとなる用語などには「 」をつけました。
仕事やスポーツで「アキレス腱を酷使」することによって起こるのが「アキレス腱付着部症」
かつて中日で活躍した矢沢選手が現役時代に悩まされたスポーツ障害、それが「アキレス腱付着部症」です。仕事やスポーツで「アキレス腱を酷使」することによって起こります。また、「筋肉の柔軟性低下」によっても起こりやすくなりますから、体が硬いな、という自覚症状のある方は注意しましょう。足に合っていない靴を履くことによっても起こるスポーツ障害です。
具体的な症状としては、アキレス腱とかかとの骨が付着している部位に強い牽引力(引っ張る力)が働くことにより付着部に炎症が起きます。特に足首を上向きに曲げると強い痛みが生じます。腫れも見られるようになります。さらに進行するとその部位に「石灰化・骨化」などの組織の変化が生じます。レントゲンで診ると腱に突き出た「骨棘」(骨のトゲ)などが認められるようになります。
矢沢選手の場合はその症状が極端でした。その対策として、矢沢選手は当時では非常に珍しいハイカットのスパイクを着用して、患部に負担をかけないよう工夫していました。それでも最終的には症状がひどくなり、引退の道を選ぶこととなりました。
こうした深刻な状況を避けるためにも、日頃からの予防対策が大切になってきます。
予防策の一番手はストレッチを習慣づけること、そして冷却すること、市販のシューズ中敷きも効果的
運動前には、とにかくしっかりとストレッチを行うこと。まずはこのことを徹底してください。特に足のストレッチは入念に行う必要があります。もしもかかとに何等かの違和感が生じた場合は、運動後にしっかり冷やすようにしましょう。
治療法は「足に合った靴を履く」、「靴に中敷きを装着する」などすぐにでもできるものから、薬物療法、手術療法まで段階に応じていろいろです。
傷みが非常に強い場合は、ステロイド剤の局所注射を行うこともまれにありますが、アキレス腱断裂を招く恐れもありますので慎重な対処が必要です。
手術療法では、腱が変形した部分や、かかとの骨の出っ張りの一部を除去します。最近では内視鏡手術が行われます。
もしもみなさんの中に、階段の昇り降りや走る時にかかとに痛みが出る、あるいはアキレス腱付着部付近を押さえたり、つまんだ時に痛みが感じられるという方がいらっしゃいましたら「アキレス腱断付着部症」を疑い、早目に診察を受けるようにしてください。
気持ちのいい汗をかくためにも、まずは日々の健康第一。今年もこのコーナーではいろいろなスポーツ障害について、その原因や予防法などをお話していく予定です。引き続きよろしくお願いいたします。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。