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No.46「平泳ぎ特有のキックが招く平泳ぎ膝」

 スポーツドクターコラム

2007/06/10

平泳ぎ膝



平泳ぎ膝は、平泳ぎ特有のキックを反復することによって起こる障害です。膝の内側側副靱帯や膝蓋骨下内側部に疼痛を感じ、競技中はもちろん、立ち上がるときや階段の昇降時に症状が出る場合もあります。
  障害の主な原因としては、以下の2つが考えられています。

(1)膝を伸ばすとき、脛骨が外旋し内側側副靱帯が引っ張られる。
(2)膝を曲げるとき、内側側副靱帯の前方線維が伸びる。

また膝を屈伸したり外旋することによって過度なストレスが加わるため、内側の滑膜が炎症を起こす場合も見受けられます。ただ平泳ぎ膝のメカニズムについては不明な点も多く、必ずしも統一の見解がなされていません。現在のところ確かなのは、膝関節のオーバーユースが原因でウィップキックとの関連が強い、という点です。

平泳ぎのキックには、ウィップキックとウェッジキックの2種類があります。ウィップキックは、膝を締めた状態から伸展・外反動作と下腿外旋動作を速く行うキックです。膝が完全伸展するのはキックの後半になり、その伸展動作によって大きな推進力を得ます。一方、ウェッジキックでは、股関節外転の大きい肢位から股関節を内転させ、その内転動作が主な推進力になります。膝の完全伸展はキックの早い段階で終えており、推進力にはそれほど影響しません。よってウィップキックの方が膝にかかるストレスが大きいと推察され、障害につながっていると言われています。

もちろんこれらの動作を地上で同じ量だけ行っても、障害が発生することはほぼありません。水の中では抵抗が加わるため、痛めやすくなってしまうのです。保存療法で十分に治る治療は保存療法が原則です。運動前後には股関節回旋のストレッチを、練習後には加えて局所のアイシングを行いましょう。疼痛がある場合は、ウィップキックでない泳法を行うことも大切です。

予防も含めたトレーニング方法としては、キック練習の割合を考慮し、大腿四頭筋、内転筋の筋力強化も必要になります。ウィップキックを行うときは、股関節外転角度の大きさが膝へのストレスにつながるため、適度な角度を保つ指導も重要です。

また、発育急進期のトレーニングには注意しなければなりません。一般的に骨よりも靱帯の成長速度が遅いため、急激に身長が伸びている選手は相対的に靱帯が緊張状態になっています。障害を引き起こしやすい状態であることを踏まえて、トレーニング計画を立てるようにしましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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