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第二期 vol.4 「ひざの外傷と慢性的な痛み」
スポーツドクターコラム2012/03/27
ひざの外傷と慢性的な痛み
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いよいよプロ野球は開幕を迎えます。キャンプ、オープン戦期間中の新聞報道などに触れると、今季はカープの評価も高いようですし、大いに期待したいと思います。先発投手陣の充実とともに、梵英心選手の状態を気にするファンの方も多いのではないでしょうか。昨年6月に自打球による左膝蓋骨骨挫傷で離脱した梵選手を始め、岩本貴裕選手も9月にオスグット病後遺症で手術を受けるなど、昨季はひざの故障に関して多くのニュースを耳にしました。今回はひざのケガについてお話します。
肩やひじ、足首などの関節と同様に、ひざの痛みを訴える選手は多くいますが、それは特別野球選手に多いというものではありません。ひざの故障については骨挫傷、骨折、靭帯や半月板の損傷など外傷性のものと、使い過ぎ症候群とも言われる慢性的な痛みに大別することができます。一般的に骨はきちんと修復すればその後の後遺症が少なく、靭帯などは回復後もプレーに支障が出やすいというイメージを持っている人が多いように見受けます。しかし、実際にそんなことはなく、十分に回復するまで治療を行なえば回復することができます。ただしプロスポーツにおいては、シーズンの期間が決まっており、選手は試合の結果で評価されます。中には今季の成績次第では来季以降の契約が結んでもらえないという危機感と戦いながらプレーする選手もいるでしょう。よく「長く選手生活を続ければ痛いところの1つや2つはある」と言いますが、先に述べた環境に加え、選手は身体の不調を高い技術力でカバーすることができるため試合に出場することができるのです。しかしそれが慢性的な痛みに繋がっていることは否めませんし、チームの成績とケガの完治のどちらを優先するかについては、非常に難しい判断を求められます。
外傷性の故障ではない慢性的な痛みの発生原因は、右表のようにまとめることができます。中でも身体のアンバランスや柔軟性不足といった点は、実際にプロの選手でも多いのではないでしょうか。どのチームにも故障の多い選手がいますが、そういった選手は総じて身体のバランスや柔軟性に問題を抱えているケースが多いのです。
詳しく説明すると、靭帯や腱が骨につくところでは筋肉の働きによるストレスが集中しやすく、関節周りの筋肉が硬ければ硬いほど関節に掛かる負荷は増すのです。その結果、周辺の靭帯を損傷しやすくなります。
それによって起こりうるケガは、通称ジャンパー膝と呼ばれる大腿四頭筋腱付着部炎や膝蓋靭帯炎、ひざの内側にある鵞足を痛める鵞足炎。腸脛靭帯のように靭帯が骨のすぐ上を通るところでは、ひざの曲げ伸ばしによって靭帯と骨の摩擦が生じて炎症の原因になります。これは体型の違いから外国人選手に多く見られる症状です。
常に100%のパフォーマンスを発揮するためには、身体を良い状態に保つことが必要です。野球に関わらずどんなスポーツにおいても走ることは最も基本的な動作です。ケアや強化、予防をしっかりと行い、持ち得る力を全てグラウンドの上で発揮してもらいたいと思います。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。