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No.34「鼠径部痛症候群は筋肉強化で回復できる」

 スポーツドクターコラム

2006/07/10

鼠径部痛症候群


グロインペイン症候群



サッカー選手によくみられる障害の1つに『鼠径部痛症候群(groin pain Syndrome)』があります。サッカーは「走りながら体を捻ってボールを蹴る」という特殊な動作により腹圧がかかり、鼠径部を痛めやすいのです。

日本では従来、多くの鼠径周辺部痛に対して、恥骨結合炎や内転筋付着部炎などと診断し、治療を行ってきました。しかし現在は、何らかの原因で体幹・股関節周囲の筋力、筋緊張バランスが崩れた結果、鼠径周辺部に痛みを生じている場合が多い、と考えられています。つまり恥骨結合炎などとは全く別の障害で、実際は内転筋近位部や鼠径管などが痛んでいることがほとんどなのです。

診察をするときは、まず股関節周辺の可動域制限や、拘縮している筋腱、筋力低下の有無を確認します。さらに改善すべき点は何か、スポーツができる状態にあるか、できるとすればどんなレベルでできるか、リハビリはどんな動作でどの程度の負荷から可能なのかをチェックすることが大切です。以前は診察時に超音波検査やヘルニオグラフィーを用いていましたが、今は施行していません。

治療は、手術を行わなくても、保存療法で十分に回復することが分かっています。しかしただ安静にするだけでなく、慢性化している場合は特に適切な筋肉強化が必要です。鼠径周辺部痛を生じていても、通常は股関節の外転、外旋、伸展動作には、痛みなく負荷を加えることができるのです。リハビリは、以下の通り、段階を経ながら行います。

  1. 内転筋と腰背部、ハムストリングの拘縮除去…強刺激のマッサージを、拘縮が改善するまでできる限りの頻度で行う。

  2. 腹筋訓練…一般的な動きの激しい腹筋ではなく、膝、股関節を屈曲させ、上体を少し起こした位置で静止し、腹筋を鍛える。

  3. 股関節外転・伸展筋力訓練…立位でゴムチューブを使ったり、うつ伏せの状態で反対側の手と足を上げるなどして鍛える。

  4. 立位で全身を使うスイング…支持棒をつかんで片脚で立ち、もう一方の足を前方から後方へ、外から内へスイングする。 


リハビリを進める中で、股関節を最大可動域まで開いても痛みが生じないレベルまで股関節の拘縮が改善し、外転・伸展筋力も痛みなく最大筋力を発揮できるようになって始めて、ランニングやキックを再開させることができます。 

先に挙げたリハビリは、予防にも大きな効果があります。鼠径周辺部痛は休み明けに発症したり、症状が悪化する例も多いため、練習を始める前には意識して訓練しましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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