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No.37「スポーツにおける頸部の障害」

 スポーツドクターコラム

2006/09/10

頸部の障害



人間の背骨には、24個の骨があります。そのうち首の部分にあたるのが頸椎です。7つの骨があり、伸展、屈曲、回旋などの動作が急激に加わったとき、様々な障害が起きやすくなります。頸椎捻挫(むちうち)もその1つです。スポーツでは屈曲損傷がしばしばみられますが、モータースポーツなど一部競技では過伸展で発生することもあります。レントゲンの所見で骨傷はなく、症状が改善すればスポーツ復帰も十分に可能です。

上肢に一過性の電撃痛が走ったときは、バナー症候群が疑われます。アメフトやラグビーなどのコンタクトスポーツで多く生じ、頭や肩に強い衝撃を受けて左右一方に首が側屈したとき、起こりやすいようです。首が屈曲した方では神経の出口である神経根の圧迫が、伸びた方では腕神経叢の伸張が発生機転になります。症状が重い場合は完全に神経が切れていることもあるため、電撃痛を感じたときは直ちに受診しましょう。

体操や水泳、柔道などで多く発生するのが脱臼骨折です。好発部位は頸椎の4?7番目で、片側脱臼の場合は脊髄不完全麻痺に、両側性の場合は完全麻痺になることも多々あります。治療は頭蓋骨を持ち上げることで脱臼整復を試みますが、それで整復が得られないときはなるべく早く整復固定手術に踏み切らなければなりません。スポーツ復帰も麻痺がないか、あっても正常レベルまで改善したときに限定されるでしょう。

水泳の飛び込みでは、椎体骨折もよく起こります。これは頭部からの強い衝撃により、椎体が圧縮されて変形する障害です。圧迫骨折で変形が少ない場合は、脊髄損傷も通常はみられないため、保存的治療で回復することが多いようです。しかし破裂骨折の場合は高頻度で脊髄損傷をきたしており、早急に手術が必要になります。麻痺が残存することも多く、通常はスポーツ復帰は困難でしょう。

第7頸椎で発生頻度が高いのが、頸椎棘突起骨折です。ラグビーなどで首を過伸展したときや、まれにゴルフスイングなどの繰り返し動作によっても発生します。

脊椎脱臼骨折など、主に脊椎の外傷に伴って発生するのは、脊髄損傷です。水泳の飛び込みやラグビー選手に多く、完全麻痺の場合は下肢が全く動かないなどの症状がみられます。ただ受傷後48時間は痛んだ部位よりも高位まで脊髄反射が起こるため、完全麻痺か否かの判定には注意が必要です。不全麻痺の場合も触覚、振動覚などの知覚や運動反射をしっかりと調べましょう。治療は頸部の安静が第一です。再発の恐れもあるため、スポーツ復帰は不全麻痺の回復例で、本人の復帰に対する強い意欲のあるものに限られます。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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