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No.56「成長期の腰痛は腰椎分離すべり症に注意」

 スポーツドクターコラム

2008/04/10

腰椎分離すべり症



腰椎分離すべり症は、以前紹介した腰椎分離症が進行した障害です。腰の後方にある椎弓と呼ばれる骨の分離が環状の両側にみられ、椎体が前方にすべった状態のことを言います。このすべりが、1つ下にある椎体に対して半分以上ずれるなど、重症化してしまうと危険です。ずれた椎体が脊髄や神経根を圧迫し、腰痛や足のしびれ、さらには運動麻痺を生じる可能性もあります。

主な原因は、腰の回旋と考えられています。野球選手にしばしばこの障害が見受けられるのも、打撃などで腰を捻る動作が多いためと言えるでしょう。また他のスポーツでも、過去にはあるJリーグチームの選手3割が分離症、もしくはすべり症であったという統計がありました。それほどスポーツ選手によく起こる障害でもあるのです。

一般的に分離症からすべり症へ悪化する頻度は10~20%で、発生時期は40代が高率とされています。しかし重度のすべり症では、ほとんどが10~14歳頃に発生していることも見逃せません。大人の骨になっていない成長軟骨が分離したまま骨化し、障害を引き起こしてしまうことも多々あります。

成長期の子供が腰痛を訴えた場合は、まず分離症を疑い、外傷の有無やスポーツ歴、疼痛の特徴などを鑑みて早期治療につなげましょう。小児の分離症はいずれ骨癒合するだろうと軽視されがちですが、その判断が悪化を招く恐れもあります。痛みを我慢してプレーを続けていると、分離症からすべり症に移行してしまうかもしれません。コルセットをしながらスポーツを続行することも十分可能なため、適切な治療を受けることが大切です。また将来的にも、腰椎分離すべり症が必ずスポーツ復帰を妨げる要因になるとは限りません。先に挙げたJリーグチームの統計では、シーズン中にこの障害が原因で長期離脱した選手はいなかった、との報告もされています。

治療としては、まず日常生活動作の見直しや、コルセットの装着などを行います。この初期治療が適切に施されていれば、ほとんどのケースで回復に向かうはずです。治療が遅れて悪化したときは、痛みを取り除くためにブロック注射を要することもあるでしょう。さらに症状が進行して麻痺を起こしてしまった場合は、手術の適応も考えなければなりません。

手術には多種多様な方法があります。症状やスポーツ特性などを考慮して選択をすることも可能です。今は医学の進歩もあり、手術を行っても顕微鏡を使うなどして小さい傷口で済むことが多く、競技復帰も格段に早くなりました。手術を恐れる人も多いのですが、スポーツを続けていくためにも、専門医と相談しながら適切な診断の下、早期回復を目指しましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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