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No.58「腱板損傷は肩関節の運動リズムの獲得が大切」

 スポーツドクターコラム

2008/06/10

腱板損傷



腱板とは、肩の内側にある棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉の腱の総称を言います。スポーツでこの部位を負傷することは多く、投球動作やラケット競技、あるいは転倒した際に肩から落ちるなどの外傷が、その原因として挙げられるでしょう。

症状としては、腱板に負荷のかかる動作中や動作後に、痛みやひっかかりを感じることなどがあります。

腱板を損傷すると、肩関節の動きを制限する腱板の機能が低下するため注意が必要です。関節周囲組織に二次的な損傷を引き起こす可能性があり、早期回復が大切になります。

治療の主な目的は、残存腱板の持つ代償作用を引き出し、肩関節の土台である肩甲胸郭関節の機能を改善することです。一般に肩甲骨と上腕骨は1対2の比率で動きますが、腱板を損傷している場合はこの限りではありません。

動きの比率が変わったり、肩甲上腕関節にかかる負担を軽減するために肩甲骨の運動が先行したりと、肩関節の動きが破綻してしまうケースが多々みられます。この動きの破綻による代償作用は、損傷した腱板へさらなる負担をかけることにもつながっており、上腕骨と肩甲骨の運動リズムの獲得は非常に重要です。

ただ、腱板が断裂していても必ず手術を要するわけではありません。保存療法で経過を観察することが多く、まずは痛みを取り除くために炎症を抑えたり、注射を打つなどした上で、理学療法を用いて治癒を図ります。筋肉の拘縮をほぐすようなリラクゼーションの獲得、可動域の訓練、カフエクササイズというチューブなどを使った腱板機能や肩甲胸郭関節機能訓練などを行って、症状の回復を待ちます。

もし以上のような治療で効果がみられないときは、MRIもしくはMRI関節造影で腱板断裂の程度を判断し、以後の治療法を見直すこともあります。残存腱板の代償作用が認められない場合や、スポーツ活動への早期復帰を強く希望する場合などは、手術療法を選択することも考えられるでしょう。

複数腱に及ぶ断裂を認めたときは、残存腱板の代償作用があまり期待できないため、手術に踏み切る可能性は高くなります。

手術には様々な手法がありますが、その中で最もよく用いられているのは、関節鏡視下腱板縫合術です。腱板が完全に断裂していても、断端をつなぎ合わせることができるときは、元に戻すようにして修復します。この手法を用いて回復できるような症状であれば、スポーツ復帰は可能でしょう。

ただ症状が重篤な場合は、投球動作やラケット競技への復帰は厳しいかもしれません。少しでも違和感を覚えたときは、早い段階で専門医を受診することをお勧めします。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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