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No.60「スポーツ活動における下腿の疲労骨折」
スポーツドクターコラム2008/08/10
下腿の疲労骨折
疲労骨折とは、骨の同一部位に小さなストレスが繰り返し加わって起こる障害です。スポーツ活動で生じることも多く、ランニングやジャンプ動作などが原因で骨折してしまいます。最も発生頻度が高い部位は、下腿の脛骨です。
病態のタイプとしては、脛骨の内後面に発生する疾走型と、脛骨の中央前面付近に発生する跳躍型に分けられます。
主な症状は、運動時の疼痛です。初期の段階では運動の終盤から痛みを訴えるようになり、悪化するとわずかな動きでも症状が表れます。ただ日常生活では痛みを感じないことが多いため、注意しなければなりません。明らかな外傷がなく気づかないうちに負傷していたり、運動を休止すると痛みが取れてしまうのもこの障害の特徴です。
診断は、まずレントゲンで行います。ただ初期の段階では写らないこともあり、2週間近く経って撮り直したときに、わずかに骨折線が認められるケースが多くみられます。より早く診断をするためには、骨シンチグラフィーや3GCT、またはMRIが有効です。
治療としては、一般的に運動を休止することがよいとされています。特に疾走型の場合は、安静と運動内容の変更によって復帰が期待できるでしょう。痛みが消失するまでランニングやジャンプを禁止しつつ、下腿に負荷のかからないプールトレーニングやエアロバイクで筋力低下を防ぎます。痛みを我慢して無理な運動を続けると、予後の良いタイプであっても完全骨折に至ることもあるため、注意が必要です。
一方、跳躍型の場合は、解剖学的に筋や腱などの軟部組織が被覆していないこともあり、治癒に難渋するケースも多々見受けられます。数ヵ月から1年以上に渡って運動を中止しても、完全に回復しない選手も少なくありません。
疲労骨折から完全骨折に移行する例も多く、積極的に手術を行う考え方もあるでしょう。髄内釘手術であれば早ければ3週間程度で骨癒合が生じ、3ヵ月程度でスポーツ復帰が可能になることもあります。
また高出力衝撃波も効果的です。1秒間に数万回の衝撃を与えて目に見えない小さな骨折を作り、血液の流れを促して早期回復を図ります。この方法であれば手術と同じか、もう少しかかるくらいでの復帰も見込めるでしょう。
疾走型、跳躍型の他に、まれに見られる症例としては、脛骨の内果に起こる疲労骨折もあります。過去には陸上のハードルや走り高跳びなど、着地するときに足関節を外反強制させられる競技で内果を痛めた例もありました。
また捻挫を繰り返して外側の靱帯が緩み、足関節が内反して過度なストレスが加わることで生じる選手もいます。いずれにしても、早期治療で重症化を防ぐことは大切です。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。