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「トレーナーの仕事とは?」大石 博暁
ストレングス&コンディショニングコラム2011/08/19
トレーナーの仕事
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トレーナーの仕事は、実に多岐に渡ります。中でも私が担当しているのは、体力面の強化です。主にパフォーマンスの向上と、傷害予防の2本立てで指導を行っています。
私がトレーナーを志した背景には、自分自身が競技者として本格的なトレーニングに出会ったことがあります。正しい動きや負荷のかけ方を身につけることによって、競技パフォーマンスの変化を実感したのです。そういったものを若い競技者や中高生、一般の選手も含めて少しでも多くの人たちに伝えることができれば、と思ったのがきっかけです。
これまでもトレーナーとして、三菱重工硬式野球部や中国電力ラグビー部、全日本男子ジュニアバレーボールチームなど、数多くのチームや選手を指導してきました。そして昨年4月からは、全日本男子のバレーボールチームのフィジカルコーチも務めています。
以前の全日本のバレーボール選手は、基本的に所属チームでトレーニングを行っていました。そのため全日本として徹底した強化を図っていなかったのです。しかし男子は3大会連続でオリンピック出場を逃していたこともあり、昨年から全日本と各Vリーグのチームが連携し、一貫したトレーニングで競技力を高めることになりました。
技術を向上させることも大切ですが、トレーニングによって体をしっかりと動くようにすることもとても重要です。例えばバレーボールでは、肩の可動域が狭かったり、肘が上がらない選手がスパイクを打とうと思っても、力強いスパイクを打つことはできません。他国の選手達がそこをパワーで押し切ったとしても、日本人が同じようにパワー勝負で勝るのは難しいでしょう。しかし選手自身の体の力を全て発揮し、日本独特の緻密なバレーボールをすることによって、世界の強豪と互角以上の戦いができる、と私は考えています。
全日本チームでも、個々の選手が自分の体をくまなく使えるようにすることから指導を始めました。7月や8月の合宿では陸上競技場で走り込みをさせたり、急な坂を全力で駆け上がってタイムを計るなど、選手にとっても初めてといえるくらいのハードなトレーニングを重ねたのです。
その成果は、早速表れてきました。トレーニングを始めた4月と11月では、バレーボール選手が一番重要視する垂直跳びで平均7・9センチほど数字が伸びたのです。最も数値が伸びた選手で11センチ、東レの柴田恭平は1メートルを超えるジャンプを記録しました。トレーニングを始めた当初は選手達にも戸惑いがあったようですが、アジア選手権で10年ぶりに優勝するなど結果が伴ってきたこともあり、今ではとても前向きにトレーニングに励んでいます。私が想像していた以上に選手達の能力は高く、今後もさらに競技力は向上していくはずです。
現在の全日本チームの目標は、やはり北京オリンピックです。出場するだけでなく、やるからにはメダルの獲得を目指しています。そのためにも、今年の強化はより重要になります。残された時間は限られていますが、これからも常に上を目指してトレーニングを続けるつもりです。
選手はもちろん、私にとっても毎回が真剣勝負です。トレーニングで怪我をさせてしまっては本末転倒ですし、かといって強度の弱いメニューでは効果はありません。その限界点を見極めて選手の競技力を高めていくことがやりがいでもあり、この仕事の喜びでもあると思っています。トレーニングは地道な努力を積み重ねることでしか向上できませんが、少しでも選手達によりよいアドバイスができれば、と思っています。
ストレングス&コンディショニングコラムは元男子バレーボール日本代表フィジカルコーチ 大石 博暁を始めとした、
飛翔会グループの経験豊富なスタッフが、トレーニングについて分りやすく解説します。