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No.71「競技力の低下に繋がる仙腸関節炎」

 スポーツドクターコラム

2009/08/10

仙腸関節炎



脊椎の最下部にあり、仙骨と腸骨の間で体重を支えている関節を仙腸関節と言います。7椎の頸椎と12椎の胸椎、そして5椎の腰椎とで形成された脊椎は、それぞれが少しずつ動くことで全体がスムーズに曲がっていますが、最下部で支える仙腸関節は体の前後屈でわずかに動き腰に柔軟性を与える働きがあり、非常に繊細な関節と言えます。

その動きが阻害され腰に痛みを感じる症状を仙腸関節炎と言います。関節の炎症により痛みを生じる障害であって、ヘルニアのような神経症状は全く伴いません。

発症原因には2つあり、ひとつはスキーやスノーボードの転倒などで直接衝撃を受け、仙腸関節の動きが制限されることで他の関節に歪みが生じて炎症を引き起こす場合。もうひとつはスポーツ全般に言えることですが、脊椎のいずれかの関節の動きが悪化し、それを最下部の仙腸関節が代償しようとする場合です。仙腸関節はとても小さい関節なので、わずかな歪みでも炎症を引き起こしてしまいます。

慢性的に仙腸関節に負担のかかる人は、慢性関節炎になっている場合が多く、そうなると仙腸関節の動きが改善しない可能性もあるので注意が必要です。痛みを我慢して競技を続けていると、股関節や膝、足首にまで痛みが生じ、さらには首痛や頭痛などと二次的、三次的に痛みが発展してしまいます。

まず専門的な知識を持った国家資格取得者に徒手療法で関節の動きを確認してもらいましょう。民間療法の中には1箇所だけ診て原因を断言することがありますが、他の関節の歪みが原因で生じる可能性も十分にあるので全身を見なければいけません。欧州を起源とする徒手療法は施術者が直接身体に触れて痛みや機能を改善させるもので、特にドイツでは古くから学問として受け継がれ今でも多くの医者が取り入れています。日本ではあまり馴染みがないものの、徒手療法はFIFA(国際サッカー連盟)の治療プログラムのベースとなっているほど、欧州では広く知られています。

身体のバランスの悪い選手は、仙腸関節に負担をかける可能性が高いと言われています。仙腸関節炎は各競技のフォームを乱す要因になり競技力の低下に繋がりますので、まずは脊椎全体の動きを整えることが大切です。

治療法は一般的に安静にすることです。ただ、スポーツ選手の場合は安静にすることができないので、鎮痛剤を飲んだりアイシングをしたりします。痛みがひどい場合には仙腸関節に注射を打って痛みを抑えることもあります。過去には手術という例もありましたが、事前に発見し治療すれば、まず手術になることはありません。少しでも違和感を感じ調子が悪いと思ったときには、すぐに専門医に診てもらいましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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