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「トレーニングを始める前に」 大石 博暁

 ストレングス&コンディショニングコラム

2011/08/19

トレーニング



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トレーニングを開始するに当たってまず大切なのは、目的をしっかりと持って取り組むことです。成長期の中高生と一般のアスリートでは、トレーニングの目的は異なります。鍛えるのではなく、リハビリを目的とする人もいるでしょう。目的が違えば、当然トレーニングの内容も大きく変わるため、明確にしておく必要があります。
自己の体の状態を把握しておくことも大切です。自分の特徴を知ることによって、強化の必要なポイントが明らかになります。自分の認識と測定の結果が違ったということも、実際はよくあることです。継続的に測定を行えば、トレーニングの効果も分かります。あまり効果が上がらないときは、トレーニングの方法を変えることもできますから、トレーニングを始める第一歩としては欠かせません。
自己分析の内容は、大きく2つに分けられます。1つは胸囲や胴囲などの周径囲、腕や下肢のなどの長さ、さらに脂肪率や骨密度といった形態面で、もう1つは筋力や持久力、敏捷性などといった機能面です。
形態面の測定の1つに、筋肉の太さがあります。筋力は筋肉の太さに比例するため、ある程度の太さを確保することはとても大切です。例えばしっかりと走ることが目的ならば、臀部や太股を鍛えなければなりません。筋肉の性質は持って生まれたものがあり、大きく変化させることはなかなか難しいのですが、トレーニングで筋肉そのものを太くさせることはできます。太さだけでなく体の使い方にも問題がある場合は、神経との伝達を向上させ、筋肉の持つ潜在能力を、最大限引き出すようなトレーニングをすることになります。
機能面では、現在全日本男子バレーボールチームで行っているものを例に挙げると、20メートル走、プロアジリティテスト(=PAT、敏捷性テスト)、垂直跳び、立ち五段跳び、30回連続ジャンプなどのテストがあります。
PATは、スタートラインから左右それぞれ5メートルの地点にペットボトルを置き、まず右のペットボトルをタッチして、次に左のペットボトルをタッチ、そしてスタートラインに戻る、というものです。距離にすると5メートル、10メートル、5メートルの計20メートルを走ることになります。この切り返しを伴う20メートルと、直線距離を走る20メートルのタイムの差を比較することによって、能力を評価することができます。
20メートル走の平均値は約3秒、PATは4秒5~7です。測定した結果、20メートル走が2秒8、PATが4秒9の選手がいたとしたら、その選手は敏捷性が劣っている、と言えます。瞬発力はあっても、切り返しのスピードが遅いのです。原因としては、切り返しに必要な筋力が低下していることや、体をうまく使うことができていないことが考えられます。
このようなことを考えずに、ただ漠然とトレーニングを行う選手も数多く見受けられます。個々の選手や指導者によって考え方も異なるため、筋肉の柔軟性を損なったり、障害を招いたりするようなものでなければ、間違ったトレーニングというものはないのですが、しっかりと考えてトレーニングを行うことで、効率よく競技力を向上させることができるのです。
測定は、それぞれの競技に合わせた評価が必要です。しかし、9割以上のスポーツが重心移動を伴う競技で、走る、切り返す、跳ぶ、という3つは全般に共通する項目と言えます。この3つだけでも構いませんから、トレーニング前にきちんと測定するとよいでしょう。






ストレングスコンディショニングコラムは元男子バレーボール日本代表フィジカルコーチ 大石 博暁を始めとした、
飛翔会グループの経験豊富なスタッフが、
トレーニングについて分りやすく解説します。

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