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第二期 VOL.8「日常生活でも起こる足底腱膜炎」

 スポーツドクターコラム

2012/08/04

足底腱膜炎



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 日々の生活を送る中で、足の裏に痛みを感じた経験があることはないでしょうか。ひと言に足の裏の痛みと言っても様々なケースが考えられますが、実際に診察すると足底腱膜炎が最も多く見られる症状です。一般にあまり馴染みのないケガかもしれませんが、ヒールを履くことの多い女性や長時間の立ち仕事をする人で痛みを感じる人は足底腱膜炎の疑いがあるでしょう。

 

 足底腱膜とは足の裏にあり、踵から足の指の付け根まで膜を張っている組織です。そこが炎症を起こすと主に足底腱膜と踵の骨が付着する部分に痛みを生じます。症状が進行すると触れるだけでも痛みを感じ、患部の出血により石灰化、骨化し骨棘が見られることもあります。骨化と聞くとなかなかイメージしにくいかもしれませんが、腱や靭と骨の結合部で出血があると、その部分に石灰が沈着し骨に変わることがあるのです。もちろんこれは踵だけでなく、肩の腱板やアキレス腱でも見られる現象です。骨化が進めば指を動かすことすら難しくなり、手術により骨化した部分を切除しなければいけません。

 

 足はよく弓と弦に例えられます。足の甲の骨が弓で足底腱膜が弦です。足の甲のアーチが高ければ、弦にあたる足底腱膜の緊張状態が長く続くことになり痛めやすくなりますし、低い場合にも足底腱膜に過度の負荷が掛かり痛みを生じる場合があります。炎症が起こるメカニズムを知るためには、歩行時の足の動きを知る必要があります。歩を進めるときに踏み出した足は、踵、つま先の順に地面に接地します。その動作の際に踵が接地したときに掛かる圧迫力と蹴り出したときに掛かるけん引力により、腱膜と踵の付着部に大きな負荷が掛かります。歩行、走行姿勢が悪い、または練習によるオーバーユースといった原因がもとで痛みを生じるのです。持って生まれた足の形や歩く姿勢によって生じることの多いケガですから、慢性化することもこのケガの特徴です。また、競技をする地面の硬さや靴も発症の原因となります。

 

 競技でいえば陸上、特にアスファルトの上を走る長距離の選手、また足を蹴り出す跳躍動作が多く、体育館の板の上でプレーするバレーボールやバスケットボールの選手によく見られます。同じ動作を続けることで足底腱膜が微小外傷や変性を繰り返し、腱膜の柔軟性が失われるのです。先程、最悪の場合は手術をすると言いましたが、これは硬化した部位を取り除き筋を伸ばすもので、当然術前よりも地面を蹴る力は弱まります。余談ですが、あるマラソンの選手は長年このケガに悩まされ手術に至りましたが、術後見事に復活を遂げオリンピックでメダルを獲得するまでに回復しました。

 

 予防にはまず患部を温めストレッチを行うことが有効です。この際足の裏を伸ばすだけでなく、周辺の筋肉も伸ばしておくと良いでしょう。加えて足のアーチを保つことも重要です。母趾外転筋を鍛えれば自然とアーチは保たれますし、以前お話しした靴の中敷きも大きな効果が望めます。歩くことは日常生活の基本です。まずはしっかりと足下を固め、気持ち良く運動を行って欲しいと思います。





スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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