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第二期 Vol.18「2選手を襲った膝内側側副靭帯損傷」

 スポーツドクターコラム

2013/05/17

膝内側側副靭帯損傷



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昨季、悲願のリーグ制覇を成し遂げたサンフレッチェは、今季もここまで連覇を狙える位置につけています。ただ、今季は開幕直後から離脱者が続出し、苦戦を強いられたことも事実です。今回はその中でも清水航平選手、森﨑浩司選手が負った『膝内側側副靭帯損傷』を取り上げたいと思います。

この疾患は膝靭帯の損傷の中でも最も発症頻度が高いもので、サッカーだけでなく、アメフトやラグビーなどのコンタクトスポーツの他、バスケットボールやテニスなど急な方向転換を必要とする競技において見られます。発症原因はタックルなどの外力によってひざが強制的に外反されたときと、ひざを内側に強く捻ったときの2つに大きく分けられます。このときに、ひざにある4本の靭帯のうち、大腿骨と脛骨を結んでいる内側側副靭帯が裂けたり、重度の場合は完全に断裂してしまうことを『膝内側側副靭帯損傷』と言います。

症状は3段階に分類される損傷度によって異なりますが、急性期(受傷後3週間程度)にはひざの痛みと可動域に制限が見られます。その後、ひざの腫れや不安定感、ぐらつきなどが症状として現れます。特に不安定感、ぐらつきはⅡ度(中等症)~Ⅲ度(重症)で顕著に見られ、歩行中にひざの関節が外れそうになったり、踏ん張りがきかなくなります。そのため、スポーツだけでなく日常生活でも大きな障害となります。また、Ⅲ度の場合は前十字靭帯損傷や半月板損傷を併発(合併損傷)することがほとんどで、前十字靭帯損傷を負うとひざが突如折れるようなひざ崩れ症状が見られます。

診断は徒手検査によってひざ関節に圧力を加えることで、簡単に行うことができます。しかし、受傷直後など痛みが強いときに患部に圧力をかけてしまうと症状を悪化させてしまうことがあるため、MRI検査で症状を正確に診断すべきです。MRI検査では、レントゲンでは写らない靭帯がはっきりと確認できます。ただし、症状がⅢ度の可能性もあるため、その場で伸展位(ひざを伸ばした状態)での外反動揺性(ひざのぐらつき)をまず確認しておくべきでしょう。

次に治療についてですが、Ⅲ度の場合は内側側副靭帯の回復を待って、半月板や前十字靭帯再建の手術を行います。手術が靭帯の回復を待ってからになるのは、手術中の動作によって損傷がさらに悪化することを防ぐためです。

一方、それ以外の場合はサポーターで固定するなど保存療法で治療を進めます。初期に適切な治療、ケアを行えば靭帯は比較的安定しますし、競技復帰もⅠ度であれば約2~3週間、Ⅱ度であれば約2ヵ月で可能となります。しかし、陳旧化(急性期に処置を行わなかったため靭帯が伸びた状態)してしまうと半月板損傷などを生じ、痛みが慢性化するため最終的に手術が必要となってしまいます。また、注意していただきたいのは「痛みがなくなる=復帰可能」ではありません。高校生などに多く見られるのですが痛みがなくなった途端、競技に復帰して症状を悪化させてしまうことがあります。

冒頭に挙げたように、この症状はスポーツの現場では非常に発症頻度が高いものですが、損傷の程度など診断を正確に行って初期から適切な治療を行うことが大切です。それが早期復帰や悪化防止に繋がります。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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