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第二期Vol.24「さまざまな要因から引き起こされる横紋筋融解症」

 スポーツドクターコラム

2013/11/26

横紋筋融解症



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これから忘年会シーズンを控え、多くの方がアルコールを摂取されるでしょう。しかし、ご存知の通り大量のアルコール摂取は非常に危険です。今回紹介する『横紋筋融解症』はアルコール摂取や過度の運動が原因でも起こる病態です。

筋肉には横紋筋、平滑筋、心筋という3種類があります。見た目にスジが見えて意識的に動かせる横紋筋、スジが無く自分の意志でコントロールできない平滑筋、心臓の壁の心筋層をつくっているのが心筋です。私たちの身体を動かしている横紋筋に起こるのが『横紋筋融解症』です。何らかの原因により横紋筋が障害され壊死、融解することでミオグロビンと呼ばれる筋肉の成分が血液中に大量に流出し、尿細管に詰まるなどして急性腎不全や多臓器不全といった生命に関わる病変を引き起こしてしまうのです。『横紋筋融解症』というのは単一の病を指すのではなく、これら一連の病態につけられた名前です。

原因は直接的要因と間接的要因の2つに分けられます。直接的要因は、交通事故や骨折、2時間以上筋肉が圧迫された場合などです。実際に95年の阪神・淡路大震災や05年のJR福知山線脱線事故では、多くの方が罹患しました。一方、間接的要因には冒頭に挙げた過度のアルコール摂取に加え、高温多湿下での長時間の運動などが挙げられます。血液中のカリウムが低下することで、筋肉の代謝が不安定となり発症します。同じく、熱中症も『横紋筋融解症』をきたす可能性があります。体温調節が行えなくなり、深部体温が40度を超えたときに筋肉の壊死、変性が起こります。スポーツにおけるハードなトレーニングも同じで、マラソンなど長時間に渡って筋肉を酷使したときに発症することがあります。これら以外にも、薬剤による副作用、糖尿病や感染症の合併症として発症する場合があります。

発症時には自覚症状として筋肉痛、筋力低下、脱力、麻痺、赤褐色尿が見られます。筋肉痛や筋力の低下などは、一般的な運動後にも起こることなので分かりづらいかもしれません。赤褐色尿については血尿のような尿が出るので見た目にも分かりやすいと思いますが、血尿とは異なり潜血反応は現れません。赤くなるのは尿中にミオグロビンが溶け出しているためで、このミオグロビンが腎不全の原因になります。赤い尿が出ること自体が緊急を要することなので、すぐに受診しましょう。検査は血液検査と尿検査によって行い、血液検査では筋肉の崩壊によって上昇するCK(クレアチニンキナーゼ)の数値を、尿検査ではミオグロビンの数値を計ります。また、医薬品を服用中に症状が現れた場合は注意が必要です。服用を中止しなければならないこともあります。

治療方法は、腎機能障害の有無によって異なります。障害がない場合は、輸液によって水分量を保ちながら腎臓の保護を図り、ミオグロビンによる2次障害を予防します。一方、急性腎不全が進行しているケースでは、血液を浄化するために血液透析を行います。腎障害は特に専門医の関与が必要になるので、症例ごとに適切な治療法が検討されなければなりません。また、罹患原因となっている疾病がある場合、そちらの治療も並行して進めます。

どのような疾病にも言えることですが、早期発見、早期治療が予後を良好なものにします。『横紋筋融解症』は生命に関わる可能性がある病態ですから尚更です。発見が遅れてしまうと、いかに治療を行ったとしても後遺症が残ってしまうこともあります。原因を理解し、症状・兆候を自覚しなければいけません。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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