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No.8「疲労骨折は耐えるだけ損『痛い』と言える事が重要」
スポーツドクターコラム2004/04/30
疲労骨折
1回の強い衝撃や圧力による骨折と違って、疲労骨折とは頻繁に起こる衝撃や圧力により骨にひびが入るか、完全に折れてしまう症状です。疲労骨折のよく起こる箇所は、当然種目ごとに違っています。サッカー選手の場合、多くのは両足の第5中足骨基部、つまり小指の付け根の骨です。この箇所の疲労骨折は別名「ジョーンズ骨折」と呼ばれています。
日本人自体がそうなのですが、サッカー選手の場合は特にO脚の割合が多いようです。このためターン、ジャンプ、キックといったサッカーで頻繁に起こるプレーでは、着地する際に体重が両足の外側、つまり小指の付け根にかかるというわけです。 さらに私達の統計によると、たとえ芝生であっても下の土質が硬いグラウンドで練習を続けてきた選手にこの症状は多く見られます。また普段履いているスパイクも、ソール(足底)が指の付け根で反れるものではこの「ジョーンズ骨折」が起こりやすいようです。 O脚を矯正するのはなかなか難しいので、予防するにはグラウンドの改良、足に合ったスパイクに替える事、さらにスパイクの中敷(アライメント)を自分の足の形に合われて作り変える事があげられます。我々飛翔会でもこの「機能的足底挿板・FOI(Functionnal Orthotic Insole)のイージーオーダーを行っています。
疲労骨折の予防に最も大事なのは、選手がそのチームの中で「痛みがある」とハッキリ言える雰囲気があるか否かです。完全に疲労骨折になる前に、きちんと治療を受ければ早めに回復できるのです。 高校生などの若いアマチュアプレーヤーの場合、疲労骨折が発見されても手術になかなか踏み切れません。手術をして練習や試合を休むと「ライバルにポジションを奪われる」と思って、痛みをこらえてプレーを続けるわけですが、それは間違いです。まだ症状が軽い段階で手術すれば、早ければ1ヵ月後には回復が可能です。痛みがなくなった分、手術前よりもいいプレーができるのは言うまでもありません。
疲労骨折を起こすまでの、初期症状である骨膜炎の段階で発見ができていれば、手術の必要はありません。骨膜炎は初期にはレントゲン写真では発見が困難なことが多く、MRIや骨シンチで発見することができます。 今年から、超音波など最新の医療機器による治療が社会保険・国民健康保険の対象となりました。02年のW杯で活躍したベッカムは、大会直前の骨折をこの機器で克服したと知られています。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。