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お知らせ
No.11「前十字靭帯の損傷は手術によって復帰できる」
スポーツドクターコラム2004/06/10
前十字靭帯
膝には4つの靭帯があります。正面から見て内側と外側にそれぞれ「側副靭帯」が、前方と後方にクロスする形で「前十字靭帯」、「後十字靭帯」があります。中でもスポーツ選手にとって大きな怪我と言われているのが前十字靭帯の損傷です。 サッカーではラフプレーなどで直接力が加わることによって靭帯を切ることもありますが、自分でひねって怪我をする場合が圧倒的に多いのです。いつもと同じ動作をしている時に、芝にスパイクが引っかかるなどして膝をひねったり伸ばし過ぎたりして、何か違う不自然な動きが加わった時に切れやすくなります。靭帯が切れた時は、自分でも分かるくらいの切れた音が聞こえる場合もあり、膝に力が入らなくなって次第に腫れてきます。
病院で検査をする時は触診するのが良いのですが、痛みが強い場合は触ることができないこともあり、膝に水分がたまっていればそれを抜くことから始めます。抜いて出てきた物に血液が多く含まれていれば、前十字靭帯が切れている可能性が高いと言えるでしょう。半月板を損傷した時にも血液は出ますが、その量は血管が入り込んでいる前十字靭帯を切った時ほどではありません。さらに詳しく調べるためにはMRIを使って、断裂の仕方、形態、場所、怪我の程度などを検査し、治療法を決定します。
前十字靭帯を断裂した場合は、多くのケースで手術を必要とします。特にプロスポーツ選手は、保存療法より確実な方法をとるために手術を行うことが多いのです。サンフレッチェの選手では上村、柳本(共に現C大阪)、中山、駒野なども手術に踏み切って、戦列に復帰しています。今では8~10カ月の治療で試合に出場でき、復帰できない選手はほとんどいないといっていいでしょう。 前十字靭帯を切っただけならば、普通に歩いて移動する程度の日常生活にはさほど支障はありません。手術に踏み切るケースが多いのは、前十字靭帯が切れることで膝のほかの場所まで故障してしまうことがあるからです。
前十字靭帯が切れると膝は内側半月板を軸に回転の動きをするため、その内側半月板が切れてしまいます。そして内側半月板の上下の軟骨が擦れて粉ができ、変形膝関節症になることもあります。また前十字靭帯だけではなく、内側副靭帯や外側半月板を同時に損傷する合併症も考えられます。そのような合併症を早期発見するためにも、MRIによる検査は非常に有効なのです。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。